2008年 02月 27日
治療者の意識 |
「真気の入れ方と邪気の抜き方」色彩・言葉・形が気を動かす
本宮輝薫著 からご紹介します。
3、コントロ-ルしつつ適切に補瀉を行うための方法
自分の身を守りつつしかも効果的な治療を行うためには、「自ずからなされる補瀉」や「ただ気を入れる」だけの治療を越えて、コントロールされた適切な補瀉を行うことが重要である。しかし、このことをいかに自覚しても、それを実践する方法が見つからなければどうにもならない。ただ、掛け声だけ大きくして、気合を入れたところで、ただの精神訓話になってしまう。
筆者が鍼灸学校を卒業して数年の間、いちばん悩まされたのが、いかにして補瀉を行うかということであった。たとえ、虚実が明白であったとしても、どうすれば邪気が抜けるのか、どうすれば真気が入るのか皆目見当がつかなかった。もちろん、教科書通りのことは一通り試しては見た。呼吸補瀉や迎随補瀉などなど……。けれども、どうにもこれといった感触をつかむことができなかった。ところが、あるとき、それぞれの鍼の打ち方ももちろん大切であるが、治療者の意識の方がより大切なのではないかと考えた。そこで、実の状態に対しては、気が抜けるようにイメージし、虚の状態に対しては、気が入るようにイメージしてみた。すると、気が動く確かな感触を得ると同時に、治療効果も格段に向上したのである。そこで、補瀉の治療にとってどのようなイメージがもっとも適切かを考え抜いたすえに、前節で論じたものにたどり着いたのである。
〔95〕補瀉を行うためには、(a)技法、(b)姿勢・呼吸・意識集中、(c)イメージが大切である。
これまで述べたことを総合すると、適切にコントロールしつつ補瀉を行うためには、次の三つの要素が重要となることになる。
(a) これまでの教科書的な技法
(b) 姿勢、呼吸、意識集中
(c) イメージ
この場合のイメージとは、具体的には、先に論じておいた、「色、形、言葉などを総合した補瀉のイメージ」を意味する。
〔96〕補瀉を適切に行うためには、イメージを活用することが大切である。
この三つの中でも、もっとも重要な要素は、おそらくイメージであろう。というのも、イメージがなければ、気の方向性が定まらないからである。
(a)の技法は、車でいえば、基本的な構造の部分、つまりハードの部分を意味するだろう。
(b)の姿勢、呼吸、意識集中は、いわばガソリンの部分にあたるであろう。
(c)のイメージは、車を運転するドライバーを意味するであろう。
ドライバーがきちんと車を運転しなければ、車は動かないか暴走するだけであろう。
では、実際の補瀉のやり方の手順についてまとめておこう。
〔97〕実際の補瀉は、次のように行う。
① 虚実の診断を行う。
② 手技をいくつか念頭におく。
③ 姿勢を調え、呼吸深くし、意識を集中させる。
④ 補瀉のいくつかのイメージからひとつを選ぶ。
⑤ そのイメージに十分に意識を集中させながら、手技を行う。
まず、きちんとした診断を行わなければならない。
次に、手技をどのようなものにするか、大体の見当をつけておく。この場合、指圧でも、ハリでもかまわないが、とりわけハリの場合、さまざまな技法がある。瀉法なら瀉法に従う手技をいくつか想定しておこう。たとえば、経絡に逆らって速刺徐抜をするとか……。あるいは、オーラヒーリングなどの場合も、経絡の流れに逆らって手や意識を動かすとか……。
そして、臍下丹田に気を込め、背筋を伸ばし、肩の力を抜き、雑念を取り除く。このとき、今から、どの部位を、どのような形で、そしてどのような方向へと治癒させようとしようとしているのか、これらについて明確な意識化を行っておくことが大切である。
さらに、たとえば、瀉法を行うと決めた場合には、瀉のイメージ図を選び、そしてその邪気が青空に吸い込まれるようにイメージをする。
そうして、以上のことをすべて稔合しながら、実際の治療を行うのである。とりわけ、意識や想念やイメージによって気は動いてゆくので、明確な意識集中が必要である。しかしながら、われわれ凡人には、長時間意識を集中し続けることは非常に困難である。(以下省略)
#楽隠居です
観照塾への参加者の中には、治療関係者がいっらっしゃいますので、何らかの参考にしていただけるのではないかと思います。基本的には、普段稽古している内容とそれほど変わらないのではないでしょうか・・・
「臍下丹田に気を込め、背筋を伸ばし、肩の力を抜き、雑念を取り除く。このとき、今から、どの部位を、どのような形で、そしてどのような方向へと治癒させようとしようとしているのか、これらについて明確な意識化を行っておくことが大切である。」という言葉は、非常に大切だと思います。そして、合気を掛ける場合にも、そのまま当てはまるのではないでしょうか・・・
(a)技法=型 (b)姿勢、呼吸、意識集中=身勢 (c)イメージ=神力徹眼心?
というふうに、私は勝手に考えているのですが・・・
参照1:経絡体操
参照2:体操とは生き方の反省である
参照3:動作のイメージ
参照4:虚無の意味
参照5:部分と全体
参照6:指圧事始め
参照7:経絡指圧の理論と実際
参照8:按腹図解
参照9:皮膚にまつわる最近の驚き
参照10:脳と足の裏は直結している
参照11:鍼灸の科学と皮膚科学
参照12:ストレスを記憶するからだ
参照13:合気の定義
by centeringkokyu
| 2008-02-27 00:11
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