足腰で物を考える |
▼「月刊全生」から、野口裕之先生の『適応と内観』を紹介させて頂きます。
この講座は家庭でやるための愉気法ではありませんから、少しずつ型についてうるさく言ってまいります。
型で第一番に心がけなければならないのは、すくなくとも、手と体が一緒に動き得る状態になることです。
例えば、ここに茶碗があるとします。
これを持って、飲むことを空想してみて下さい。
飲もうとしてお茶碗を上げてくる。
その時に、腰が一緒にフツと反ってくるような手の位置があります。
手を上げれば腰も反る。
手を下ろせば腰が弛む。
そういう手の位置があるのです。
つまり、手と腰が一緒になって動く。
手の高さ、肘の張り具合、手首の角度、それを工夫してごらんなさい。
意識しないのに、スーッと背中が伸びてくる位置、それが手と体が一緒になっている位置です。
初等では、このような手と体のつながりをもった構えが最も重要なのです。
手をちょっと動かせば、体がフッと動く。
腰をちょっと動かせば、手もフッと動く。
そういう手と腰が完全に一つに動ける状態、これをまず覚えることです。
そのためには、まず手を動かさないという意識をもった方が、覚えるのに早い。
手をなるべく動かさないということを習慣づけるとよろしい。
そうすると、整体の技の質が高くなってきます。
整体というのは手の技ではないから、むしろ手を止めるのです。
三人一組で練習してみましょうか。
一人が物を持って、立ち上がってまた置く。
その間、指先一つ動いてはいけません。
肘の角度も動いてはいけません。
丹田から気が抜けると、すぐ手は動きます。
それから、物を離す時は、ちょっと膝を弛めると指が自然にフッと弛みます。
厚みのある物の方がやりやすい。
最初に立ったまま物の幅を指で決めておいて、沈んでいって指をスポッとはめればいい。
そして一担持ち上げたら、また沈んで、元の位置に置きます。
その間、周りの人は指が動いたかどうか、肘が動いたかどうか、それを見ます。
胴が動かないのに手の位置が変わるということは、手が動いたということです。
持つのは膝を閉めればいい。
膝を閉めて手が寄らなかったら、手の決め方がおかしい。
離す時には膝の力をフッと抜けばいい。
フッと弛めると自然に落ちる。
次に、正座したまま、両手でやってみて下さい。
物が手前にある時は、胸を弛めれば届くから簡単ですが、遠くの方に置いてある場合は、仙椎をかなり後ろにグーッと伸ばさないと届かない。
物を持ち上げて、そのまま二十秒でも三十秒でもその状態を維持できるのが、手首が決まったという感じの第一歩です。
人間の手というのは、脳と非常に客接な関係をもって進化してきてしまったために、手と脳の関係は濃密で、手と胴体との関係は希薄になってしまったのです。
つまり、人間は手では考えるが、腰では考えない習慣をつけてしまった。
ところが、整体では手と腰とをつなげているわけです。
あえて言えば足腰で物を考えるということに慣れていただかないと、整体を伝えても、受け取る側が手の技として受け取ってしまう。
小手先の技術でやっていると、それは整体ではなくなってしまう。
受講生の皆さんは頭のいい人が多いから、手でものを考えてしまうが、足腰で物を考える習慣をつけなければいけない。
ですから始めのうちは手を止める練習をしても、手も足腰の一部であるかのように動くことを習慣づけなければいけません。
整体の技というのは、腰が動いて、結果として手が動く。
手は常に結果として動くのです。
手だけが独立して動いて、胴は何ら動いていないというものからは整体の型というのは生まれない。
やはり手を止めるという意識をもたないと、型というものは発生しないのです。
いろいろな手の止め方がありますが、最低マスターしなければいけないのは、手首から先がフラフラ動かないことです。
手首を決めると言いますが、これが型の問題としては、初等で一番大事なことです。
しかし、あまり気張って決める必要はありません。
今のように物を持ち上げて、ピタッと止めていられればいい。
指で持っているのではなく、手首で持っている感じ、あえて言えば、腰で持っている感じ、丹田で持っている感じがするようになればいいのです。
〆管理人です
施術をしていると、手の力が抜けているかが大事だなぁとつくづく思います。
それが、施術に向かっているときの姿勢や心持ちに、そのまま表れている気がします。
参照1:自分が整えば、相手も整う
従って、相手に働きかけるのではなく、自分自身に働きかけていく。
これが内観法の操法の一番の基礎です。
つまり、感応というものは、相手と自分が一つなのですから、自分の体を観察すれば、相手の異常は分かる。
逆に言えば、自分の体に生じた異常感を正すように自ら行気をしていけば、自ずと相手も変わってしまう。
参照2:足を治して骨盤を治す
足首、足の形、足の使い方の癖などは骨盤の状況をそのまま反映しています。踵のカサカサなのは骨盤の前後運動が悪いということであり、余分に開いているということです。それは生殖器の収縮する力が弱いということでもあるのです。だから老衰すると踵から変わってきます。その次に踝が落ちてきますが、そうなるとその能力がずうっと落ちてきて、分泌が足りなくなってきている。
参照3:仮想対談2
注意深く観察すれば、一番強くて大きい筋肉は、骨盤につながっているのが分かるだろう。ほとんどの仕事は、これらの筋肉、とくに臀部、大腿部、下腹部の筋肉が行う。体の中心部から四肢の方へ移るにつれて、筋肉は次第に小さくなる。四肢の筋肉の役目は、四肢の動きを正確に方向づけることであるが、骨盤の筋肉の主要な力は、四肢の骨格を伝わり、作用する地点まで到達する。
参照4:腹部ゆるめて気をおさめる
一挙に全身を動かして軽妙に
とくに全身をつらぬくことを要す
気は高揚させ
精神は内に収め
欠点のところ,凸凹のところ無くし
停滞を無くす
その根は足に,そして腿に発しあげ
腰で主宰し,手指に形を表わす
足から腿そして腰へ
すべて完整一気にすべし
☆リンク先で更新された記事
◆馴染んで身体に訊く
◆『あくびをこらえる』 その4
自分の身体が繋がった状態を味わったところで、「孔雀のポーズ」は一区切りです。
体幹をそのままにして、手を脚の上に置き、一息つきましょう。
手を胸の前で合わせると、始めの合掌に戻ります。
最初と比べてみると、姿勢が変わっていることを感じられるかも知れません。
何度か行なったら、立ち上がって自分の身体の変化をチェックしてみましょう。