医療界と製薬業界の流行 |
医療界でヒットした代表的な新語として挙げられるのがメタボリックシンドローム、略して「メタボ」だ。2005年あたりから使われだすと、一気に流行語となり、翌06年の「新語・流行語大賞」でトップテン入りを果たす(ちなみに同年の大賞は「イナバウアー」と「品格」)。
突然湧いて出たような「メタボ」だったが、この言葉が指す疾患群は以前から存在した。内臓肥満に糖尿病、高血圧、脂質異常症を合併した状態に、医療界は「死の四重奏」などと格調高い名称を与えたこともあったが、“死”という文字が忌み嫌われたのか、一般に浸透することはなかった。
それが「メタボ」に変えた途端の大ヒット。国民医療費の高騰にあえぐ国は「メタボ健診」の受診を呼びかけ、周囲から「メタボ腹」とか「メタボ親父」などの派生語で虐げられるようになった中年男性たちが、競うようにしてダイエットに取り組み始めたのはご承知のとおり。
「メタボの成功」が医療界にもたらした影響は大きく、診療科ごとに新語の作成に力を入れるようになる。
07年には整形外科とリハビリテーションの分野から、変形性膝関節症や骨粗しょう症などの運動器障害により“要介護”となるリスクの高い状態を指して「ロコモティブシンドローム」(略称「ロコモ」)という新語が誕生した。
現役医師が実名で証言する「アブない薬」
「毎年、国内の薬の売上高ランキング統計が出ます。それを眺めていると、医療界と製薬業界の流行がよくわかります。
まず気が付くのがARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)という高血圧の薬が、ものすごく売れているということ。'14年度の表(最終ページ)を見ても、ベスト10のうちブロプレス、オルメテック、ミカルディスと3つも入ってきている。ARBという降圧剤が製薬会社の稼ぎ頭であることがよくわかります」
14位のディオバンと21位のアジルバを含めると、売れ筋のARBだけで売り上げは年間3300億円を超える。しかし、岡田氏はこれは単なる医療費の無駄遣いだと断言する。
「ARBがそれ以前に使われていたサイアザイド系利尿剤より、患者の寿命を延ばすという証拠はどこにもないのです。私は高血圧の患者さんには薬価の安いサイアザイドを中心に処方しています。サイアザイドにも副作用はありますが、長年使用しているので、どのような副作用であるかよくわかっており、コントロールが効きます。ARBはたしかに血圧を下げるし、脳卒中の発生率を下げる。しかし、それでも死亡率が下がらないのは、なんらかの副作用の影響があるのではないか」(岡田氏)
実際、現在使われているARBを旧来の薬価の安いサイアザイドやカルシウム拮抗薬に代えれば、降圧剤に使われる薬代は7割も削減できるという推計もある。ちなみにブロプレス8mgを1年間飲み続けた場合の薬代(3割負担)は年間で約1万5000円だ。
そもそも血圧を下げる必要がない人にまで降圧剤が処方されているケースも多い。
「年相応に血圧は上がっていくもの。血圧を下げれば脳出血のリスクは減りますが、逆に脳梗塞の危険性が高まります」(岡田氏)
ARBの他にも「すごく売れているけれども、効果のほどは未知数」という薬は多い。
(中略)
年齢を重ねてくると、誰でも筋肉が衰えて怪我をしやすくなる。骨折でもすると寝たきりになってしまう場合もあり、骨が弱くなる骨粗鬆症は怖い症状だ。
骨粗鬆症の薬はフォルテオが19位に入っているが、薬剤師で栄養学博士の宇多川久美子氏は「骨粗鬆症の薬は医者に処方されても、飲む必要はない」と語る。
「私自身の経験の話ですが、骨粗鬆症の薬を飲んで骨密度が上がったという例をほとんど知りません。半年薬を飲んで『変化なし』でも、医者は『これから効果が出るところだからやめないように』という。そして2年後に骨密度が下がっていたら、『薬を飲んでいたから、この程度の下がり方で済んだのだ』と言ってさらに服用を促します。(以下略)」
〆管理人です。
ロコモティブシンドロームは、将来の「寝たきり」や「要介護」を予防し、健康寿命を伸ばすことを目的として提唱されています。
骨粗鬆症の治療薬であるフォルテオは、自分で注射する方法もあり、整形外科で処方されることも増えてきているようです。
注射を二年間毎日打ち続けなければならず、一か月の薬価は4万円以上になります。
果たして健康寿命の延伸や医療費の削減に繋がっていくのでしょうか。
参照1:フォルテオ注の効果と副作用【骨粗しょう症治療剤】
参照2:「メタボリックシンドローム」とは?
参照3:薬を売るために病気はつくられる?
参照4:薬効とは、何%で有意
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