2009年 01月 09日
「噛み合わせ」と「歩行」 |
「体温低下症候群」その後の10年 金尚哲著からご紹介します。
▼歯は全身のバランスコントロール器だ
ーー皆さん、金先生の治療によってご自身の病気が治ったり、患者さんが目の前で治るのを見て納得、共感なさったということですね。では、金先生と3人の先生方で共同研究して提唱している全身バランス・プラクティスについて教えてください。
中村 私たちの体は、頭蓋と環椎(頸椎1番)が重力に対して垂直・水平になった時、噛み合わせによる咬合圧が中心圧となって、人体の骨が重力に対して垂直・水平に保たれます。つまり、歯は単なる咀嚼のための運動器だけではなく、垂直・水平のバランスコントロール器でもあるのです。
全身バランスに関与するすべての組織、器官を総称して、私たちはバランスコントロール系と名付けていますが、それぞれの組織や器官は合目的的に、機能的に相互に協調して働いています。そのシステムの中心が咬合圧力を伴った咬合位ーーつまり正しい噛み合わせなのです。
ーー噛み合わせが狂うと、どのようなことが起きるのでしょうか?
中村 骨などが歪み、体のバランスが崩れ、不定愁訴をはじめとした現代医学では原因不明とされる症状が現れます。
ーー歯と体は密接な関係があるということですね。
中村 その通りです。バランスコントロール系は円環運動しています。歯→歯周組織→顎関節→頭蓋→環椎→他の椎骨→骨盤→踵から足の裏、鎖骨から肘、手のひらへと連動するのです。したがって、一つの組織、器官に病的な変化が生じれば、連動する他の組織や器官にも影響を与えます。つまり、すべてが正常に機能している場合だけ、障害なく作動するシステムなのです。私たちの研究でわかった歯と体の関係は、
(1)歯と血液循環
(2)歯と体温
(3)歯と基礎代謝
(4)歯と自律神経
(5)歯と重力と人体の垂直・水平バランス
(6)歯と骨
(7)歯と筋力、腱
(8)歯と正しい歩行バランス
(9)歯と咬合圧力
(10)歯と咬合圧力を伴った噛み合わせと口蓋、顎関節
(11)歯と重力と咬合圧力を伴った顎位
と11項目に及びます。
ーー実際にこの療法で、どんな病気が治ったのですか?
中村 現代医学では難病、不治の病、原因不明の病と言われる疾病にかかり、専門医の治療を受けている患者にこの療法を行うことで、専門医の治療効果を上げ、症状の寛解、あるいは完治という結果を得ています。病名は、IgA腎炎、原因不明の不整脈、脳の血流障害、糖尿病患者のインスリンの有効的作用、原因不明のめまい、バセドー氏病、重症筋無力症、不定愁訴などです。
▼歯学界の常識を打ち破る、環椎をポイントにした歯の噛み合わせ調整
ーー歯の噛み合わせがさまざまな病気と関係している、健康維持に重要だということを主張する歯科医が今までもいらっしゃいました。医学界でも歯の噛み合わせに注目する医師が増えています。歯の噛み合わせについての本も何冊も出版されています。従来の歯の噛み合わせを重視する説と、全身バランス・プラクティスはどこが違うのでしょうか?
中村 確かに噛み合わせが重要だということは広く認識されつつありますが、正しい噛み合わせはどんな状態なのかという、明確な判断基準はありませんでした。したがって治療法も確立していないというのが現状です。
しかし、金先生は第1頸椎である環椎と頭蓋が重力に対して垂直・水平になっているのかを基点として、噛み合わせを診る方法を初めて提唱されました。従来の歯学では、環椎は自由に回転しない骨なので、第2頸椎から診ることになっているのです。
ーー第1頸椎と第2頸椎では、そんなに差があるのですか?
中村 頭蓋に一番近いのが第1頸椎ですから、そこが狂っていたら歯の噛み合わせも垂直・水平になりません。環椎は顎関節とイコールなので、顎関節の偏位に直結します。また、口蓋の天然のアーチも変形してしまいます。口蓋が左右対称の天然アーチを描いていなければ、正しい噛み合わせにならず、咬合圧が違った方向にかかってしまいます。
ーーでも、第1頸椎つまり環椎は動かないんですよね。
大友 それが歯学会の常識で、上顎の変形は治らないとされています。でも、変形した口蓋の患者に、健康な場合の理想的なアーチになるような各個トレーを作って口の中に入れて押し上げることで、頭蓋と環椎が垂直・水平になります。
中村 私は歯科大学の客員研究員ですが、全身バランス・プラクティスを受けた患者さんの顎位がガラッと変わっているレントゲン写真を見て、研究室の先生方も驚かれています。
金 歯科医の先生方は病人ばかり診ているから気が付かないんですよ。私は健康な人を追いかけて、健康な条件を追い求めました。そうしたら、健康な人は必ず全身も口蓋も左右対称だったんです。それが、全身バランス・プラクティス理論を構築するきつかけになりました。
▼咬合紙と水平診療台では、正しい噛み合わせ治療はできない!
▼歯科医療の常識が噛み合わせを悪くしている
▼顎関節症は垂直・水平位で噛み合わせ調整すれば治る!
▼ハイヒールは万病の元
さて、今まで靴は健康に悪影響を与えると述べてきましたが、最悪なのがハイヒールです。ハイヒールを履けば、重心が極端に前にかかります。重力に対し、体が垂直、水平でなくなります。鳩胸出っ尻で顎を乗き出す姿勢でないとバランスが取れません。
この姿勢は重いリュックを背負ったのと同じ状態ですから、全身に疲労がたまります。臀筋の発達が阻害され、背筋やその他の筋肉も衰えていきます。臀筋ーーお尻の筋肉がなければ、どうやって重力に対抗して正しい歩行ができるのでしょうか。
当然、背骨のS字型彎曲も狂うので、内臓疾患や神経症などさまざまな障害が現れてきます。
歩行のメカニズムからも見てみましょう。
踵を上げると筋肉が硬直し、踵がフラット面に着地すると筋肉は緩みます。ハイヒールを履いている時は、常に踵が上がった状態なので、筋肉は硬直しっぱなしということになります。つまり、“第三の心臓”の理論で説明すると、フラットな面に対して踵が着き、つま先が上がっている状態が静脈の働きで、フラットな面に対して踵とつま先が着いた状態がニュートラル、フラットな面に対してつま先が着き踵が上がっている状態が動脈の働きです。ハイヒールを履けば、動脈だけで静脈の働きがなくなります。血液の循環が悪くなることは言うまでもありません。
また、ハイヒールは便秘にも関係します。踵を着地し、小指側から親指側に蹴るという歩行バランスの時、骨盤は開いて閉じ(上・下に揺れる)というミキシング運動を繰り返します。口から食べた食物は喉を通って胃袋へいき、腸を通過し排便されるのですが、ハイヒールを履いていると、正しい歩行バランスにおける骨盤のミキシング運動ができないので、どうしても便秘がちになるというわけです。
#楽隠居です
水曜日から中心塾芦屋教室が始まりました。今年から5年目に入ります。Hさんと教室のある市民センターまで一緒に歩いていますと、左右の足音のリズムが違うことに気づきました。Hさんにそのことをお話しすると、靴が悪いと思っていたと言われました。でも、よくお聞きすると、他の靴でも同じだということでした。
歩き方を拝見すると、左右の股関節のバランスがずれ、右膝を突っ張って緊張させたまま歩いておられました。そこで、レッスンでは、骨盤の緊張と弛緩が、骨盤時計の12時ー6時と同じであり、歩く動作は3時ー9時になることを確認してから、肚と腰の動きを重点的にやっていただきました。
レッスン修了後には、皆さんとても足が軽くなったと言いながら、颯爽とお帰りになられました。勿論、Hさんの左右の足音も同じになっていました。
鼻から吸って鼻から吐くことや、軽く上下の歯を噛み合わせておくということも、全身のバランスコントロールに関係してくるはずです。横隔膜と足首及び足の指の関係も皆さん体感してくださいましたので、頸椎を伸ばすということの重要性も納得していただけたように思います。
◎ YOMIURI ONELINE(2008年12月15日 読売新聞)からも関連記事をご紹介しておきます。
(4)転倒予防へ口腔ケア
高齢者の自立支援のため、口腔ケアの重要性がますます高まっている(菊谷さん提供)
かむことと力の発揮との間には深い関係がある。
東京歯科大准教授でスポーツ歯学が専門の武田友孝さんによると、かむと大脳皮質の運動野が活性化され、全身の関節周辺の筋肉が働き、体が固定される。「動物がエサを食べる時、体がぐらつかないように進化した」と解説する。
かみしめ効果が大きいのは重量挙げのように体を固めて力を出す動きだ。逆に100メートル走などは、かめば逆効果になる。ただし、速い運動でも、体操の着地やサッカーのヘディング、ボクサーがパンチを当てた時など、瞬間的にかむことは多い。
ボクシングやラグビーの選手が使うマウスピースは樹脂製で軟らかく、歯と歯でかむよりも強い力でかめる。そのため、首回りが固定されてけがを防ぐほか、より大きな力を発揮できる。
高齢者の転倒予防にも、かむ効果は生かせる。広島大のグループが、自立歩行できる認知症高齢者146人の転倒頻度とかみ合わせの関係を調べたところ、年2回以上転倒したグループでは、奥歯を失い、かめない人が66%いたが、転倒が1回以下のグループでは22%と少なかった。奥歯がない人でも入れ歯でかめるようにすると転倒は減った。
日本歯科大病院口腔(こうくう)介護・リハビリテーションセンター長の菊谷武さんは「かみ合わせが戻れば、転倒しそうになった時にふんばりが利き、バランスが保てる。高齢者の自立支援には、口腔機能の改善が欠かせない」と話している。
健康情報があふれる中、「かむ」という基本動作の重要性を見直したい。(藤田勝)
参照1:歯
参照2:足の出し方
参照3:脳と足の裏は直結している
by centeringkokyu
| 2009-01-09 00:01
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