2007年 07月 04日
メタボリックシンドローム健診 |
【スリム社会への挑戦】第1部(3)高額医療費削減
自営業者ら国民健康保険の40〜74歳の加入者2571万人の特定健康診査・保健指導は、医療保険者である市町村に義務づけられる。職場の健康保険組合のような団体ではなく個別に受診するので、どのように健診の受診率や保健指導の実施率を上げるかが大きな課題となる。健診できる医療機関を確保できても、実際に担当する保健師らの人員不足は免れない。
◆高齢で発症する前に診断実施
「効率的な医療費削減のための健診・保健指導を行うには、高額医療費の原因になっている病気の兆候がある人を優先して予防対策を取ってみたらよいのでは」。兵庫県尼崎市の保健師、野口緑さんはそう考えた。
野口さんは、心筋梗塞(こうそく)など生活習慣病につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の危険因子が多い市職員を選出し、保健指導を徹底することで現役の職員の死亡や長期療養者の削減に成功した。この取り組みは「尼崎モデル」として全国的に注目されていた。
このような予防対策を尼崎市の約18万人の国保加入者に対しても行おうと、野口さんは平成17年に国保の医療費分析に取りかかった。
国保加入者は、自営業者や会社を定年退職した高齢者らが大半を占める。分析結果は市職員と同様で、高額医療費のほとんどが脳卒中や心筋梗塞など循環器系の病気だった。
また、長期にわたって高額な医療費がかかる人工透析を必要とする患者は、平成12年から新たに毎年100人単位で増えていた。透析の医療費は年間1人550万円、100人だと5億5000万円の増加になる。このうち、透析患者の4割は肥満など生活習慣が原因で発症する糖尿病が悪化し腎臓の病気を起こしたケースだった。
「高齢になって病気を発症する前に、メタボリックシンドロームの該当者・予備軍を減らすのが、医療費削減にもっとも効果がある」と野口さんは分析結果をみて確信した。
翌18年度、「ヘルスアップ尼崎戦略」と名付けた住民健診を20歳から40歳代の国保加入者を対象に実施。血圧測定など通常の健診に加え、メタボリックシンドローム診断基準の必須項目である腹囲(男性85センチ以上、女性90センチ以上)を測定。この結果、男性の40歳以上では半数が、30歳代でも4割が基準を超えた。超過グループには全員、糖尿病を早期発見できるブドウ糖負荷試験を行った。
健診結果を基にメタボリックシンドロームの該当者・予備軍には1人30分をかけて個別に保健指導を実施。受診者本人に1日の摂取・消費カロリーを計算してもらった上で、食生活の改善について指導した。
ジョッキ1杯のビールにはコーヒーの砂糖スティック5本分の糖分が入っているが、毎日飲んだらどうなるか。問題点がイメージできるように説明しながら、自分で1日の目標をたててもらった。
一部の人には半年後に評価健診を受けてもらい、前回健診と比較した。その結果、「Hb(ヘモグロビン)A1c(過去約4カ月の平均血糖値)」では87%が「問題あり」から「正常値」に改善した。メタボ退治の戦略がつかめてきた。
20年4月にスタートする健診・保健指導は、40歳から74歳までが対象と人数は多いが、全国統一の標準のプログラムが使われる。データは電子化され、結果は他の地域との比較など総合的に評価できる。野口さんがめざす医療費削減のための効率化についても見通しが立ちやすくなるに違いない。(飽食社会取材班)Sankei Web(2007/07/02)
「メタボ健診・指導」で年2800億円 政投銀が病院支援を強化
生活習慣病を予防するために平成20年度から始まる「特定健康診査」と「特定保健指導」で、新たに最大2800億円超の医療市場が生まれることが、日本政策投資銀行の分析でわかった。
特定健診・保健指導は、国のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策の柱として、企業の健康保険組合や国民健康保険を運営する市区町村などに採用が義務づけられる。健診、指導費はかかるものの、医療費の3分の1を占める糖尿病など生活習慣病を予防して、結果的に、将来の医療費を抑制する取り組みだ。
政投銀は「経営難の医療機関が収益態勢を改善するチャンスにもなる」と注目しており、この分野に参入を検討する病院などへの支援を強化していく方針だ。
特定健診は、腹囲測定と血液検査を40〜74歳の被保険者と被扶養者(計約5600万人)に実施するもの。現在はメニューにない健診もある。
政投銀は、健保組合などが新たに支払う健診費用について、厚生労働省の目標健診率(保険別に65〜85%)が達成されれば、単価が5000円として年間800億円、9000円なら1400億円に達するとみている。
特定健診でメタボやその予備軍と判定されると、面接や食事、運動のアドバイスといった特定保健指導を程度に応じて最長6カ月間受ける。
この指導料の単価は、軽度の「動機づけ支援」で7000〜1万2000円、重度の「積極的支援」では3万〜6万円と推定し、対象者(約2000万人)の45%(厚労省目標)に実施した場合、総額で年間730億〜1411億円になると推計している。
近年、多くの医療機関が設備投資の増加と診療報酬の引き下げなどにより、厳しい経営を強いられている。
一方、政投銀は国の医療政策が予防を重視する中、医療機関が特定健診・保健指導の実施に向けたメタボ対策の施設づくりや計測器、分析システムの導入など新規の設備投資にどう取り組むかを注視。来年以降の民営化に向けて、三菱商事と共同で病院再生ファンドを立ち上げるなど、病院などへの融資態勢を強化している。Sankei Web(2007/07/02 )
東海大学の大櫛教授のコメント メタボリックシンドロームのでたらめ
男性「ウエスト85cmで危険」はウソ!
中高年男性の半数が、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の疑い・・・。先日発表された厚生労働省の調査結果に、思わず自分のおなかをつまんでドキッとした人は少なくないだろう。日本では昨年4月、日本動脈硬化学会が中心になって、生活習慣病関連学会8学会が独自の診断基準を発表した。ところが、ウエスト85センチをメーンとするこの診断基準には「科学的な根拠がない」という批判が噴出している。
健康診断のデータ分析を長年続けている東海大学医学部の大櫛陽一教授は「診断基準というのは本来、医学的研究の統計判断に基づかなければ、科学的に根拠があるとは言えません。ところがメタボリック症候群については、米国などの一部を除いては、世界的にも統計学的に証明する研究は行われていません。日本では健診の基準値そのものがおかしいので、極めて低リスクでもメタボリック症候群とされてしまうのです」と言う。大櫛教授は、全国70万人の健康診断データを用いて、同学会の基準値を検証してみた。すると、さまざまな問題点が見つかったという。 週刊朝日 2006年05月26日
参照1:「メタボリックシンドローム」とは?
参照2:厚労省は「新しい患者」を作りたい
詳しくは、「メタボリックシンドローム 疑問」をWEB検索してください。
自営業者ら国民健康保険の40〜74歳の加入者2571万人の特定健康診査・保健指導は、医療保険者である市町村に義務づけられる。職場の健康保険組合のような団体ではなく個別に受診するので、どのように健診の受診率や保健指導の実施率を上げるかが大きな課題となる。健診できる医療機関を確保できても、実際に担当する保健師らの人員不足は免れない。
◆高齢で発症する前に診断実施
「効率的な医療費削減のための健診・保健指導を行うには、高額医療費の原因になっている病気の兆候がある人を優先して予防対策を取ってみたらよいのでは」。兵庫県尼崎市の保健師、野口緑さんはそう考えた。
野口さんは、心筋梗塞(こうそく)など生活習慣病につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の危険因子が多い市職員を選出し、保健指導を徹底することで現役の職員の死亡や長期療養者の削減に成功した。この取り組みは「尼崎モデル」として全国的に注目されていた。
このような予防対策を尼崎市の約18万人の国保加入者に対しても行おうと、野口さんは平成17年に国保の医療費分析に取りかかった。
国保加入者は、自営業者や会社を定年退職した高齢者らが大半を占める。分析結果は市職員と同様で、高額医療費のほとんどが脳卒中や心筋梗塞など循環器系の病気だった。
また、長期にわたって高額な医療費がかかる人工透析を必要とする患者は、平成12年から新たに毎年100人単位で増えていた。透析の医療費は年間1人550万円、100人だと5億5000万円の増加になる。このうち、透析患者の4割は肥満など生活習慣が原因で発症する糖尿病が悪化し腎臓の病気を起こしたケースだった。
「高齢になって病気を発症する前に、メタボリックシンドロームの該当者・予備軍を減らすのが、医療費削減にもっとも効果がある」と野口さんは分析結果をみて確信した。
翌18年度、「ヘルスアップ尼崎戦略」と名付けた住民健診を20歳から40歳代の国保加入者を対象に実施。血圧測定など通常の健診に加え、メタボリックシンドローム診断基準の必須項目である腹囲(男性85センチ以上、女性90センチ以上)を測定。この結果、男性の40歳以上では半数が、30歳代でも4割が基準を超えた。超過グループには全員、糖尿病を早期発見できるブドウ糖負荷試験を行った。
健診結果を基にメタボリックシンドロームの該当者・予備軍には1人30分をかけて個別に保健指導を実施。受診者本人に1日の摂取・消費カロリーを計算してもらった上で、食生活の改善について指導した。
ジョッキ1杯のビールにはコーヒーの砂糖スティック5本分の糖分が入っているが、毎日飲んだらどうなるか。問題点がイメージできるように説明しながら、自分で1日の目標をたててもらった。
一部の人には半年後に評価健診を受けてもらい、前回健診と比較した。その結果、「Hb(ヘモグロビン)A1c(過去約4カ月の平均血糖値)」では87%が「問題あり」から「正常値」に改善した。メタボ退治の戦略がつかめてきた。
20年4月にスタートする健診・保健指導は、40歳から74歳までが対象と人数は多いが、全国統一の標準のプログラムが使われる。データは電子化され、結果は他の地域との比較など総合的に評価できる。野口さんがめざす医療費削減のための効率化についても見通しが立ちやすくなるに違いない。(飽食社会取材班)Sankei Web(2007/07/02)
「メタボ健診・指導」で年2800億円 政投銀が病院支援を強化
生活習慣病を予防するために平成20年度から始まる「特定健康診査」と「特定保健指導」で、新たに最大2800億円超の医療市場が生まれることが、日本政策投資銀行の分析でわかった。
特定健診・保健指導は、国のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策の柱として、企業の健康保険組合や国民健康保険を運営する市区町村などに採用が義務づけられる。健診、指導費はかかるものの、医療費の3分の1を占める糖尿病など生活習慣病を予防して、結果的に、将来の医療費を抑制する取り組みだ。
政投銀は「経営難の医療機関が収益態勢を改善するチャンスにもなる」と注目しており、この分野に参入を検討する病院などへの支援を強化していく方針だ。
特定健診は、腹囲測定と血液検査を40〜74歳の被保険者と被扶養者(計約5600万人)に実施するもの。現在はメニューにない健診もある。
政投銀は、健保組合などが新たに支払う健診費用について、厚生労働省の目標健診率(保険別に65〜85%)が達成されれば、単価が5000円として年間800億円、9000円なら1400億円に達するとみている。
特定健診でメタボやその予備軍と判定されると、面接や食事、運動のアドバイスといった特定保健指導を程度に応じて最長6カ月間受ける。
この指導料の単価は、軽度の「動機づけ支援」で7000〜1万2000円、重度の「積極的支援」では3万〜6万円と推定し、対象者(約2000万人)の45%(厚労省目標)に実施した場合、総額で年間730億〜1411億円になると推計している。
近年、多くの医療機関が設備投資の増加と診療報酬の引き下げなどにより、厳しい経営を強いられている。
一方、政投銀は国の医療政策が予防を重視する中、医療機関が特定健診・保健指導の実施に向けたメタボ対策の施設づくりや計測器、分析システムの導入など新規の設備投資にどう取り組むかを注視。来年以降の民営化に向けて、三菱商事と共同で病院再生ファンドを立ち上げるなど、病院などへの融資態勢を強化している。Sankei Web(2007/07/02 )
東海大学の大櫛教授のコメント メタボリックシンドロームのでたらめ
男性「ウエスト85cmで危険」はウソ!
中高年男性の半数が、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の疑い・・・。先日発表された厚生労働省の調査結果に、思わず自分のおなかをつまんでドキッとした人は少なくないだろう。日本では昨年4月、日本動脈硬化学会が中心になって、生活習慣病関連学会8学会が独自の診断基準を発表した。ところが、ウエスト85センチをメーンとするこの診断基準には「科学的な根拠がない」という批判が噴出している。
健康診断のデータ分析を長年続けている東海大学医学部の大櫛陽一教授は「診断基準というのは本来、医学的研究の統計判断に基づかなければ、科学的に根拠があるとは言えません。ところがメタボリック症候群については、米国などの一部を除いては、世界的にも統計学的に証明する研究は行われていません。日本では健診の基準値そのものがおかしいので、極めて低リスクでもメタボリック症候群とされてしまうのです」と言う。大櫛教授は、全国70万人の健康診断データを用いて、同学会の基準値を検証してみた。すると、さまざまな問題点が見つかったという。 週刊朝日 2006年05月26日
参照1:「メタボリックシンドローム」とは?
参照2:厚労省は「新しい患者」を作りたい
詳しくは、「メタボリックシンドローム 疑問」をWEB検索してください。
by centeringkokyu
| 2007-07-04 00:00
| 社会