2007年 06月 30日
風邪は100%の治癒 |
「医学は科学ではない」米山公啓著から引用します。
風邪をひいたとしよう。熱が出て、どうやら扁桃腺も腫れているようだ。さて、あなたはどうするだろうか。開業医などへ行き、風邪の治療薬をもらう人もいるだろう。その薬を飲んで風邪が治れば、「さすがに医者からもらった薬は効く」という感想を持つかもしれない。私の患者さんのなかには、「先生のところの風邪薬がやっぱり効くんですよ」と言う人もいる。
だが、残念ながらそれは思い込みに過ぎない。25ページで述べたように、呼吸器学会は風邪薬自体が風邪を治すのではないと明確に述べている。
開業医に風邪でかかるときには、100%治癒するはずである。それは自然治癒するのが風邪であるからだ。
その知識があったとしても、やはり風邪にかかると市販の薬だけでは心配になり、医者に行き風邪薬をもらったり、最近ではほとんど行われない栄養注射を受けたりするであろう。
これは開業医へ行けば特別な治療を受けることができるという幻想、期待を持っているからだ。
医学というのは、医者と患者が作り上げたある種の幻想の上に成り立っている。
風邪で医者に行けば特別な治療をしてくれて、早く治すことができる。医者も風邪の患者は、薬によって早く治しているはずだ。このようなお互いの幻想の上に成立したルールにのっとって、風邪の治療は行われている。
患者は、「風邪を早く治したいので注射をお願いできませんか」という要求をする。
病気というものが、ある特別な治療で治せるなら、患者からそういう要求を受けなくても、医者は選択しているはずであるが、患者の行動としては、風邪が治らない、早く治すには医者へ行くしかないということになる。
もちろん最近ではインフルエンザの治療薬ができて、それを飲めば熱も早く下がることが多い。しかし、その薬を服用しても、インフルエンザにかかっている期間を短くできるのは平均一日である。
その程度の効果であるが、それで承認されてきたのは、ほかに有効な薬がないという証明でもある。
つまり患者は風邪で医者にかかるときは100%治癒を期待しているのである。それが自然治癒であろうと、医者で行った注射のおかげであろうと、病気を治したと信じたいし、医者に行けば風邪は治るという記憶ができあがってしまうと、風邪が長引けば医者へ行って治療を受けることになる。
そこにも科学的な裏付けによって人間が行動しているのではないことが見て取れる。自分のなかで、病気にどう対処すればベストなのかを、知らないうちに作り上げているのだろう。
こうした現象は、医療へのアクセスが極端にいい日本でこそ可能である。
医者の数が少なかったり、医者へかかるには数時間もかかれば、医者へ行く選択は、風邪ではありえないであろうし、海外のように医療費が高ければ、ドラッグストアで薬を買って自分で治すしかない。
風邪で医者へ行くというのは、日本の医療費の安さ、誰でもどこでもかかることができるという非常に恵まれた医療環境だからこそできることである。
医療の選択は社会状況が大きく影響していることを、あまり気が付かないでいるのが現状である。
医療費を削減していこうとするなら、患者の持つ医療への幻想や、治療習慣ともいえる「風邪は医者へ行けば治る」という行動を、どこかで直していく必要があるだろう。
参照:薬には副作用がある
風邪をひいたとしよう。熱が出て、どうやら扁桃腺も腫れているようだ。さて、あなたはどうするだろうか。開業医などへ行き、風邪の治療薬をもらう人もいるだろう。その薬を飲んで風邪が治れば、「さすがに医者からもらった薬は効く」という感想を持つかもしれない。私の患者さんのなかには、「先生のところの風邪薬がやっぱり効くんですよ」と言う人もいる。
だが、残念ながらそれは思い込みに過ぎない。25ページで述べたように、呼吸器学会は風邪薬自体が風邪を治すのではないと明確に述べている。
開業医に風邪でかかるときには、100%治癒するはずである。それは自然治癒するのが風邪であるからだ。
その知識があったとしても、やはり風邪にかかると市販の薬だけでは心配になり、医者に行き風邪薬をもらったり、最近ではほとんど行われない栄養注射を受けたりするであろう。
これは開業医へ行けば特別な治療を受けることができるという幻想、期待を持っているからだ。
医学というのは、医者と患者が作り上げたある種の幻想の上に成り立っている。
風邪で医者に行けば特別な治療をしてくれて、早く治すことができる。医者も風邪の患者は、薬によって早く治しているはずだ。このようなお互いの幻想の上に成立したルールにのっとって、風邪の治療は行われている。
患者は、「風邪を早く治したいので注射をお願いできませんか」という要求をする。
病気というものが、ある特別な治療で治せるなら、患者からそういう要求を受けなくても、医者は選択しているはずであるが、患者の行動としては、風邪が治らない、早く治すには医者へ行くしかないということになる。
もちろん最近ではインフルエンザの治療薬ができて、それを飲めば熱も早く下がることが多い。しかし、その薬を服用しても、インフルエンザにかかっている期間を短くできるのは平均一日である。
その程度の効果であるが、それで承認されてきたのは、ほかに有効な薬がないという証明でもある。
つまり患者は風邪で医者にかかるときは100%治癒を期待しているのである。それが自然治癒であろうと、医者で行った注射のおかげであろうと、病気を治したと信じたいし、医者に行けば風邪は治るという記憶ができあがってしまうと、風邪が長引けば医者へ行って治療を受けることになる。
そこにも科学的な裏付けによって人間が行動しているのではないことが見て取れる。自分のなかで、病気にどう対処すればベストなのかを、知らないうちに作り上げているのだろう。
こうした現象は、医療へのアクセスが極端にいい日本でこそ可能である。
医者の数が少なかったり、医者へかかるには数時間もかかれば、医者へ行く選択は、風邪ではありえないであろうし、海外のように医療費が高ければ、ドラッグストアで薬を買って自分で治すしかない。
風邪で医者へ行くというのは、日本の医療費の安さ、誰でもどこでもかかることができるという非常に恵まれた医療環境だからこそできることである。
医療の選択は社会状況が大きく影響していることを、あまり気が付かないでいるのが現状である。
医療費を削減していこうとするなら、患者の持つ医療への幻想や、治療習慣ともいえる「風邪は医者へ行けば治る」という行動を、どこかで直していく必要があるだろう。
参照:薬には副作用がある
by centeringkokyu
| 2007-06-30 00:00
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