2007年 03月 21日
洗脳の世界 |
「洗脳の世界」だまされないために マインドコントロールを科学する
キャスリーン・テイラー著 佐藤敬訳から抜粋してご紹介します。
洗脳の世界
宗教、カルト、CM通販、北朝鮮、教育、家庭…。われわれの周囲に思想コントロールがどのように存在するのかを多くの事例から明らかにし、洗脳のメカニズムを脳科学から徹底解明する。
◎「洗脳」という言葉は戦争の混乱の中で生まれた。その戦争とは第二次世界大戦と思うかも知れないが、そうではなくーー振り返って見るとナチスの手法だったことが明らかになっているがーー朝鮮戦争であった。この戦いは1950年に中国の共産主義政権に支援された北朝鮮が韓国に侵入して発生し、その後、組織されたばかりの国連が韓国に多国籍軍を送った。
その共同作戦の中心をなしたアメリカは、敵に捕らわれた兵士に奇妙なことが起こっていることに気付いた。戦争捕虜施設から戻った兵士の一部は、明らかに共産主義に転向しており、母国を非難し、毛沢東主義的生活を賛美する傾向が強くなっていた。
◎政治も宗教も、ある種の中心的概念(自由、国家、神)を声高に叫ぶが、これらはあまりに抽象的なので、ここでは「霊的概念」と呼ぶことにする。
霊的概念は極めて曖昧なので、しばしば個人によって解釈が大きく異なる(政治理論家は、自由や平等など政治的な霊的概念を「基本的に議論されたもの」であるという。この曖昧さは、それについての議論を不可能にしており、そのような議論に加わる人達は事実上食い違った話をしていることになる。
演説者は、自分達の計画や目的が細かなところでは非現実的であり、隠れた落とし穴やその他の悪魔的なものを含んでいることを覆い隠すため、或いは、聴衆の感情的反応を引き出して、その議題にたいする集中度を高めたりするために、そのような「輝かしい一般論」を用いることが多い。
抽象的で曖昧であると同時に、霊的概念は価値観を含んでいる。それ自体が極めて重要とみなされ、感情をためこんだ巨大な荷物のように現れて、信奉する人達の優越感を高める。
◎一般的に、霊的概念は血塗られている。人間の命より重要視されるため、それらは、第一に結果が方法を正当化し、第二にその概念の最高権威を疑うものは人間ではないとみなす。
◎最善の教育は、知識以上のことを教えるものである。教育は批判的思考を教え、それは、行動する前に立ち止まって考える能力であり、それによって感情的圧迫に負けることを避けることができる。
これは思想コントロールではない。全く反対で、精神の解放なのである。最も高等な知識でさえ、その能力においては不完全である。たとえ不十分であっても立ち止まって考える能力があれば、最も明るい色、最も大きな音や最も誘惑的な宣伝など、身の周りの環境に常に反応して「刺激に触発される」ことの危険から逃れることができる。
発見学習的反応に従うこと、常に本能と感情に従って生きることは、多くの点で容易な生き方であるが、思考することは経験の無い者にとっては特に骨の折れることである。しかし、感情も消耗するものであり、短期的反応は長期的には健康と生存に有利ではない。
楽だという理由でハンバーガーを食べて、いつの日かわれわれを死なせてしまう動脈の脂肪をわざわざ求めているように、感情に依存することはわれわれに大きな災いをもたらす。
◎宣伝がわれわれをよい消費者にしようとするのに対して、教育はわれわれをよい市民にしようとする。特に教育は若者の心をコントロールするので、洗脳であるとの非難を常に受けてきたし、事実、社会のイデオロギーの原理は、宣伝と同じくらい、教育によってもたらされてきた。
しかし、教育は実際には不十分であることが多いものの、その目標は個人の自由を増大させることにある。物を購入することは自由をある程度は達成するかもしれないが、不可能な夢を伝える宣伝は、明らかに過大な期待を持たせることによってわれわれを苦しめてもいる。「これを買うとあなたは幸せになります」というのは、われわれがそれを買っても、前と同じように不幸だというメッセージなのである。
これに対して、教育は明確に幸福を約束することはない。しかしながら、それは幸福を獲得する力を高めることを目指しており、そのために教育を受ける者に受け入れられやすい。最悪の場合には、教育は若者の心を捻じ曲げ、損なう危険があり、最も成功した場合には、推論を検証するために立ち止まって考えるのに重要な能力を与えることができる。われわれは情報に囲まれているが、理解し選択・分析する力がなければ、それらの情報をうまく利用できない。
用語解説より
霊的概念 ethereal idea
神、美、正義、自由など、価値を含み、極度に強力な感情を引き起こす概念。それらは極めて曖昧で、人によって異なった、時には逆の意味を持つ場合がある。さまざまな霊的概念の強調は、文化間である程度異なるが、概念そのものは人間社会で広く表現され、価値を置かれ、議論される。
洗脳とは直接関係ありませんが、マクドナルド関連記事を抜粋でご紹介します。
マックをやり玉 移民労働者らトマト仕入れの値上げ運動
FujiSankei Business i. 2007/3/19
低賃金の改善を目指す米国の移民農場労働者らが、収穫したトマトの買い取り価格引き上げを求め、米ファストフード業界に戦いを挑んでいる。不買運動を盾に、すでに大手の一角を攻略。次の矛先をハンバーガーチェーン大手のマクドナルドに向けた。同社が要求に屈すれば業界全体への波及は必至とあって、同業他社はかたずをのんで成り行きを見守っている。(坂本一之)
≪超低賃金の改善求め≫
ロイター通信によると、マクドナルドにトマトの値上げ要求を突きつけているのは、フロリダ州のトマト農場などで働くメキシコやグアテマラ移民ら2500人超で組織する団体「コーリション・オブ・イモカリー・ワーカーズ」(CIW)。
労働者らの報酬は、トマトの収穫量32ポンド(1ポンドは約0・45キロ)当たり45セントで、ビッグマックを1個買うのに、181ポンドもの収穫作業が必要になる計算だ。CIWは農場からの買い取り価格を1ポンド当たり1セント(約1・16円)上乗せするよう要求。これにより、労働者の収入は約7割増えるとしている。
スーパーサイズ・ミー
(Super Size me)は、2004年に公開されたアメリカのドキュメンタリー映画である。監督・出演はモーガン・スパーロック。モーガンが一日に3回、30日間、マクドナルドのファストフードだけを食べ続けたらどうなるかを記録したものである。この間、健康のための運動はやめ、彼の身におこる身体的・精神的な影響について記録している。さらに、モーガンはファストフード業界の社会的な影響を調査し、この業界が利益のために栄養を犠牲していることを明らかにした。
参照1:達人が人を見る目
参照2:心理指導は自発的変化喚起の術也
参照3:才能、教育、成功
参照4:観察力
参照5:自壊する帝国
キャスリーン・テイラー著 佐藤敬訳から抜粋してご紹介します。
洗脳の世界
宗教、カルト、CM通販、北朝鮮、教育、家庭…。われわれの周囲に思想コントロールがどのように存在するのかを多くの事例から明らかにし、洗脳のメカニズムを脳科学から徹底解明する。
◎「洗脳」という言葉は戦争の混乱の中で生まれた。その戦争とは第二次世界大戦と思うかも知れないが、そうではなくーー振り返って見るとナチスの手法だったことが明らかになっているがーー朝鮮戦争であった。この戦いは1950年に中国の共産主義政権に支援された北朝鮮が韓国に侵入して発生し、その後、組織されたばかりの国連が韓国に多国籍軍を送った。
その共同作戦の中心をなしたアメリカは、敵に捕らわれた兵士に奇妙なことが起こっていることに気付いた。戦争捕虜施設から戻った兵士の一部は、明らかに共産主義に転向しており、母国を非難し、毛沢東主義的生活を賛美する傾向が強くなっていた。
◎政治も宗教も、ある種の中心的概念(自由、国家、神)を声高に叫ぶが、これらはあまりに抽象的なので、ここでは「霊的概念」と呼ぶことにする。
霊的概念は極めて曖昧なので、しばしば個人によって解釈が大きく異なる(政治理論家は、自由や平等など政治的な霊的概念を「基本的に議論されたもの」であるという。この曖昧さは、それについての議論を不可能にしており、そのような議論に加わる人達は事実上食い違った話をしていることになる。
演説者は、自分達の計画や目的が細かなところでは非現実的であり、隠れた落とし穴やその他の悪魔的なものを含んでいることを覆い隠すため、或いは、聴衆の感情的反応を引き出して、その議題にたいする集中度を高めたりするために、そのような「輝かしい一般論」を用いることが多い。
抽象的で曖昧であると同時に、霊的概念は価値観を含んでいる。それ自体が極めて重要とみなされ、感情をためこんだ巨大な荷物のように現れて、信奉する人達の優越感を高める。
◎一般的に、霊的概念は血塗られている。人間の命より重要視されるため、それらは、第一に結果が方法を正当化し、第二にその概念の最高権威を疑うものは人間ではないとみなす。
◎最善の教育は、知識以上のことを教えるものである。教育は批判的思考を教え、それは、行動する前に立ち止まって考える能力であり、それによって感情的圧迫に負けることを避けることができる。
これは思想コントロールではない。全く反対で、精神の解放なのである。最も高等な知識でさえ、その能力においては不完全である。たとえ不十分であっても立ち止まって考える能力があれば、最も明るい色、最も大きな音や最も誘惑的な宣伝など、身の周りの環境に常に反応して「刺激に触発される」ことの危険から逃れることができる。
発見学習的反応に従うこと、常に本能と感情に従って生きることは、多くの点で容易な生き方であるが、思考することは経験の無い者にとっては特に骨の折れることである。しかし、感情も消耗するものであり、短期的反応は長期的には健康と生存に有利ではない。
楽だという理由でハンバーガーを食べて、いつの日かわれわれを死なせてしまう動脈の脂肪をわざわざ求めているように、感情に依存することはわれわれに大きな災いをもたらす。
◎宣伝がわれわれをよい消費者にしようとするのに対して、教育はわれわれをよい市民にしようとする。特に教育は若者の心をコントロールするので、洗脳であるとの非難を常に受けてきたし、事実、社会のイデオロギーの原理は、宣伝と同じくらい、教育によってもたらされてきた。
しかし、教育は実際には不十分であることが多いものの、その目標は個人の自由を増大させることにある。物を購入することは自由をある程度は達成するかもしれないが、不可能な夢を伝える宣伝は、明らかに過大な期待を持たせることによってわれわれを苦しめてもいる。「これを買うとあなたは幸せになります」というのは、われわれがそれを買っても、前と同じように不幸だというメッセージなのである。
これに対して、教育は明確に幸福を約束することはない。しかしながら、それは幸福を獲得する力を高めることを目指しており、そのために教育を受ける者に受け入れられやすい。最悪の場合には、教育は若者の心を捻じ曲げ、損なう危険があり、最も成功した場合には、推論を検証するために立ち止まって考えるのに重要な能力を与えることができる。われわれは情報に囲まれているが、理解し選択・分析する力がなければ、それらの情報をうまく利用できない。
用語解説より
霊的概念 ethereal idea
神、美、正義、自由など、価値を含み、極度に強力な感情を引き起こす概念。それらは極めて曖昧で、人によって異なった、時には逆の意味を持つ場合がある。さまざまな霊的概念の強調は、文化間である程度異なるが、概念そのものは人間社会で広く表現され、価値を置かれ、議論される。
洗脳とは直接関係ありませんが、マクドナルド関連記事を抜粋でご紹介します。
マックをやり玉 移民労働者らトマト仕入れの値上げ運動
FujiSankei Business i. 2007/3/19
低賃金の改善を目指す米国の移民農場労働者らが、収穫したトマトの買い取り価格引き上げを求め、米ファストフード業界に戦いを挑んでいる。不買運動を盾に、すでに大手の一角を攻略。次の矛先をハンバーガーチェーン大手のマクドナルドに向けた。同社が要求に屈すれば業界全体への波及は必至とあって、同業他社はかたずをのんで成り行きを見守っている。(坂本一之)
≪超低賃金の改善求め≫
ロイター通信によると、マクドナルドにトマトの値上げ要求を突きつけているのは、フロリダ州のトマト農場などで働くメキシコやグアテマラ移民ら2500人超で組織する団体「コーリション・オブ・イモカリー・ワーカーズ」(CIW)。
労働者らの報酬は、トマトの収穫量32ポンド(1ポンドは約0・45キロ)当たり45セントで、ビッグマックを1個買うのに、181ポンドもの収穫作業が必要になる計算だ。CIWは農場からの買い取り価格を1ポンド当たり1セント(約1・16円)上乗せするよう要求。これにより、労働者の収入は約7割増えるとしている。
スーパーサイズ・ミー
(Super Size me)は、2004年に公開されたアメリカのドキュメンタリー映画である。監督・出演はモーガン・スパーロック。モーガンが一日に3回、30日間、マクドナルドのファストフードだけを食べ続けたらどうなるかを記録したものである。この間、健康のための運動はやめ、彼の身におこる身体的・精神的な影響について記録している。さらに、モーガンはファストフード業界の社会的な影響を調査し、この業界が利益のために栄養を犠牲していることを明らかにした。
参照1:達人が人を見る目
参照2:心理指導は自発的変化喚起の術也
参照3:才能、教育、成功
参照4:観察力
参照5:自壊する帝国
by centeringkokyu
| 2007-03-21 00:00
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