2005年 12月 27日
合気とりあえず理論 |
大阪同好会 五周年記念誌(1992年発行)に掲載された私の原稿をのせます。
OS先生が、大阪で講習会を催して下さるようになって5年たちました。この5年間、大阪同好会が続けてこられたのも、OS先生を初めとして、会員の皆様方の御協力の賜と感謝しております。
初めてOS先生の合気の技に触れた時の感動と、10年で先生の技の何%まで近づく事が出来るかと言うことが、私が大東流を続けてこられた理由です。そして、目標の年月の半分が過ぎ去ってしまいました。この頃つくづく感じる事は、合気の技は本当に奥が深くて、際限がないのではないかという事です。さらに、『合気は哲学である』と感じる、今日この頃なのです。しかし、まだその事については考えが纏まっていませんので、今回は今までの私の稽古の方法について述べさせていただきます。
私が最初にこだわったのは、円運動でした。とりあえず身体で円を描く、それも出来る限り大きな円を描く。その事によって、中心軸がずれようと、お尻が出ようと気にしませんでした。当然技も効きませんでした。しかし、大きな円運動を繰り返す事で、『丸い呼吸』と『振り子のリズム』を身体に覚えさせる事が出来たと思います。そして、大きな動きをする事で、踵からの力が、相手に伝わって行く様子がよく解り、『イメージ』も使いやすくなりました。
それから、少しずつ円を小さくして、幾つもの円をつなげて切れないように注意して、自分の中心軸も崩さないで、『引きと攻め』で相手との接点の『弛みを取り』続ける。そうする事によって、相手の中心軸をずらせるが、自分の中心軸はしっかりと守る。そのためには、歩幅を大きくしないで、小股で相手の動きに着いていく。
以上のような必要条件を満たす事を目標として、稽古を続けてきた訳です。そして、自分なりに、ある程度は必要条件を満たせる様になってきた頃から、瞬間に合気を入れる技の稽古を始めました。しかし、どうしても力が入って、直線的な技になってしまうので、初心にかえって、瞬間に力を抜いてから攻める、吸収系の技を稽古して『吸い込み』の時間を無限小にすることによって、攻める技に転換する方が、かえって一番大切な『円運動』が正確に行える筈だと考えました。
このように、私の場合は、技を効かせる為の必要条件を出来るだけ考えて、それらの条件を、同時に出来るだけ多く満たせるような動きを、少しオーバーに表現してみる。そしてそれを稽古の中で吟味する。それを繰り返すことによって、自分の感覚も変わるし、それに伴って必要条件も自ずと整理されてきます。
以上のように、自分なりの仮説をたてて、それを稽古で吟味する。そして、もしその仮説が間違っていると感じたら、直ぐにそれを訂正し、新しい仮説を立ててみる。このような仮説を私は『とりあえず理論』と呼んでいます。自分の感覚が変わる度に、理論も変わる。『とりあえず理論』が私は気に入っています。自分の理論に責任を持たなくていいというのがとても気楽でいいのです。そうして、一生『とりあえず理論』を楽しめればいいのではないかと考えています。しかし、一歩でも先生の境地に近づく為に、精進し続ける所存ですので、OS先生初め会員の皆様、宜しくご指導の程お願い申し上げます。
最後になりましたが、OO会大阪同好会の発足当時の事を、簡単に紹介させて戴きます。
大阪同好会は、気の研究会で指導されていたO嶋さん(現在自分の流派を作って独立)と東京の会員であるK用さんとの縁で、O嶋さんが月に数回東京へ習いに行きながら、OS先生に毎月大阪に来て講習会を催していただくという形で始まりました。当初は、気の研究会の会員でもありました、T橋さん・H内さん・K野ほかとA井さん・T中(周)さん・K本さん・S川さんほかの中国武術所属の2つのグループが中心になって、稽古を始めました。3年目にO嶋さんが独立することになりましたので、講習会も半年くらいブランクがありました。しかし、会員有志の方々から、回数を減らしてもいいから、講習会を続けてほしいという意見がありましたので、私が連絡係りになって、3ケ月に1回の講習会が再開されるようになりました。そして、現在に至っている訳です。現在は稽古にお越しになっていらっしゃいませんが、OO会大阪同好会の基礎づくりにご尽力戴いた、O嶋さん・H内さん・A井さんには、心より感謝しております。この機会にお礼申し上げます。
追記
OS先生が講習会で教えて下さった技を、皆さんと稽古する時に、私の場合は技術の部分よりも、体感を重視してきました。現在の私が感じている事を、文章にするのは不可能に近いのですが、自分の為の覚書という事で、少しだけ纏めてみました。何かの参考にでもして戴ければ幸いです。
・自然体で真直ぐに立つ。
・相手を飛んでくるボールだとイメージして、攻めてきた手や身体を受け取るような感じで、相手の力を吸収する。『吸い込み』
・相手との接点の力を瞬間に抜くことによって、相手の体軸をずらす。『吸い込み』
・相手が攻めてきた力を、接点から順に、身体の各部分の力を抜きながら、身体の中を通して、足の裏まで導く。『吸い込み』
・足の裏で地面に加えた力の反作用を、股関節まで導く。
・ヘソとその裏にある命門を直径とする球体が、腹部にあるとイメージして、命門を開き丹田と命門にかかる圧力が同量になるようにする。(これは、相手に手首を捕まれた瞬間に力を抜き、その位 置を動かさずに、あたかも朝顔の花が音もなく開くごとく手を開くのと、同じ原理である。)
・左右の腰骨を結んだ線を、球体の中心軸として球体が回転し、股関節まで導いた力を、命門を始点として、背骨を通して相手との接点にまで導く。
・相手との接点部分だけを実にして『弛みをとり』相手と一体になる。(接触面を点にする。)
・足の裏の接点および腹部の球体の円運動が、相手との接点に伝わり、その接点での円運動になる。
・実にした、相手との接点部分の円運動が、『引きと攻め』になり、相手の足を止める。
・相手との接触部分は移動しても、接点の圧力は常に一定にして『弛みを取り』続ける。
・足の裏(座り技の場合は、床との接触部分を足の裏と考える。)・腰・相手との接点の3箇所で『の』の字を描く。しかし、最初のノの部分は相手に描いてもらい、後はとぎれないようにして自分が続ける。
・力が相手に返っていく様子を、正確にイメージするだけで、非常に小さい動きでも相手を動かすことができる。(イメージした通り筋肉が順番に動く事を、実感する。「フェルデンクライス身体訓練法」)
・本当に動かしたいのは、相手との接点ではなく、相手の中心軸である事を忘れない。
・相手との接触部分はあまり動かさないようにして、自分の中心軸を真直ぐに保ったままで、相手の中心軸に入っていく。(両肩及び両股関節の4点を結んだ長方形の面を作り、その面を縦に2等分する線が中心軸になる。そして中心軸を保ちながら、肩で攻める。)
・呼吸のリズムと動作のリズム及び視線やイメージが一致するように動く。(すべての一致が力を生む。)
・振り子のリズムを身体で表現できるように練習する。(物体が落ちるリズムは、一定である。)
・相手との接触部分の緊張と弛緩の差を大きくする。(完全な弛緩が完全な緊張を生む。)
・高低の落差をつけるように、相手を導く。『山切りカット』(投げない。上げれば落ちる。)
・様々な陰陽虚実の転換に注意する。(作用/反作用・落/差・引き/攻め・接点や意識の虚/実など)
・『当てる合気』『付ける合気』『抜く合気』の3つの合気に分類することができる。
・極論すれば、3つの合気は外見上の速さが異なるだけで、動作・リズム・イメージは同一である。(『付ける合気』の稽古さえ正確にすれば、後の2つは自然に出来るようになる。)
・意識的に吸ったり・吐いたり・止めたり・呑んだりする事によって、相手の動きを操る。『呼吸を盗む』
OS先生が、大阪で講習会を催して下さるようになって5年たちました。この5年間、大阪同好会が続けてこられたのも、OS先生を初めとして、会員の皆様方の御協力の賜と感謝しております。
初めてOS先生の合気の技に触れた時の感動と、10年で先生の技の何%まで近づく事が出来るかと言うことが、私が大東流を続けてこられた理由です。そして、目標の年月の半分が過ぎ去ってしまいました。この頃つくづく感じる事は、合気の技は本当に奥が深くて、際限がないのではないかという事です。さらに、『合気は哲学である』と感じる、今日この頃なのです。しかし、まだその事については考えが纏まっていませんので、今回は今までの私の稽古の方法について述べさせていただきます。
私が最初にこだわったのは、円運動でした。とりあえず身体で円を描く、それも出来る限り大きな円を描く。その事によって、中心軸がずれようと、お尻が出ようと気にしませんでした。当然技も効きませんでした。しかし、大きな円運動を繰り返す事で、『丸い呼吸』と『振り子のリズム』を身体に覚えさせる事が出来たと思います。そして、大きな動きをする事で、踵からの力が、相手に伝わって行く様子がよく解り、『イメージ』も使いやすくなりました。
それから、少しずつ円を小さくして、幾つもの円をつなげて切れないように注意して、自分の中心軸も崩さないで、『引きと攻め』で相手との接点の『弛みを取り』続ける。そうする事によって、相手の中心軸をずらせるが、自分の中心軸はしっかりと守る。そのためには、歩幅を大きくしないで、小股で相手の動きに着いていく。
以上のような必要条件を満たす事を目標として、稽古を続けてきた訳です。そして、自分なりに、ある程度は必要条件を満たせる様になってきた頃から、瞬間に合気を入れる技の稽古を始めました。しかし、どうしても力が入って、直線的な技になってしまうので、初心にかえって、瞬間に力を抜いてから攻める、吸収系の技を稽古して『吸い込み』の時間を無限小にすることによって、攻める技に転換する方が、かえって一番大切な『円運動』が正確に行える筈だと考えました。
このように、私の場合は、技を効かせる為の必要条件を出来るだけ考えて、それらの条件を、同時に出来るだけ多く満たせるような動きを、少しオーバーに表現してみる。そしてそれを稽古の中で吟味する。それを繰り返すことによって、自分の感覚も変わるし、それに伴って必要条件も自ずと整理されてきます。
以上のように、自分なりの仮説をたてて、それを稽古で吟味する。そして、もしその仮説が間違っていると感じたら、直ぐにそれを訂正し、新しい仮説を立ててみる。このような仮説を私は『とりあえず理論』と呼んでいます。自分の感覚が変わる度に、理論も変わる。『とりあえず理論』が私は気に入っています。自分の理論に責任を持たなくていいというのがとても気楽でいいのです。そうして、一生『とりあえず理論』を楽しめればいいのではないかと考えています。しかし、一歩でも先生の境地に近づく為に、精進し続ける所存ですので、OS先生初め会員の皆様、宜しくご指導の程お願い申し上げます。
最後になりましたが、OO会大阪同好会の発足当時の事を、簡単に紹介させて戴きます。
大阪同好会は、気の研究会で指導されていたO嶋さん(現在自分の流派を作って独立)と東京の会員であるK用さんとの縁で、O嶋さんが月に数回東京へ習いに行きながら、OS先生に毎月大阪に来て講習会を催していただくという形で始まりました。当初は、気の研究会の会員でもありました、T橋さん・H内さん・K野ほかとA井さん・T中(周)さん・K本さん・S川さんほかの中国武術所属の2つのグループが中心になって、稽古を始めました。3年目にO嶋さんが独立することになりましたので、講習会も半年くらいブランクがありました。しかし、会員有志の方々から、回数を減らしてもいいから、講習会を続けてほしいという意見がありましたので、私が連絡係りになって、3ケ月に1回の講習会が再開されるようになりました。そして、現在に至っている訳です。現在は稽古にお越しになっていらっしゃいませんが、OO会大阪同好会の基礎づくりにご尽力戴いた、O嶋さん・H内さん・A井さんには、心より感謝しております。この機会にお礼申し上げます。
追記
OS先生が講習会で教えて下さった技を、皆さんと稽古する時に、私の場合は技術の部分よりも、体感を重視してきました。現在の私が感じている事を、文章にするのは不可能に近いのですが、自分の為の覚書という事で、少しだけ纏めてみました。何かの参考にでもして戴ければ幸いです。
・自然体で真直ぐに立つ。
・相手を飛んでくるボールだとイメージして、攻めてきた手や身体を受け取るような感じで、相手の力を吸収する。『吸い込み』
・相手との接点の力を瞬間に抜くことによって、相手の体軸をずらす。『吸い込み』
・相手が攻めてきた力を、接点から順に、身体の各部分の力を抜きながら、身体の中を通して、足の裏まで導く。『吸い込み』
・足の裏で地面に加えた力の反作用を、股関節まで導く。
・ヘソとその裏にある命門を直径とする球体が、腹部にあるとイメージして、命門を開き丹田と命門にかかる圧力が同量になるようにする。(これは、相手に手首を捕まれた瞬間に力を抜き、その位 置を動かさずに、あたかも朝顔の花が音もなく開くごとく手を開くのと、同じ原理である。)
・左右の腰骨を結んだ線を、球体の中心軸として球体が回転し、股関節まで導いた力を、命門を始点として、背骨を通して相手との接点にまで導く。
・相手との接点部分だけを実にして『弛みをとり』相手と一体になる。(接触面を点にする。)
・足の裏の接点および腹部の球体の円運動が、相手との接点に伝わり、その接点での円運動になる。
・実にした、相手との接点部分の円運動が、『引きと攻め』になり、相手の足を止める。
・相手との接触部分は移動しても、接点の圧力は常に一定にして『弛みを取り』続ける。
・足の裏(座り技の場合は、床との接触部分を足の裏と考える。)・腰・相手との接点の3箇所で『の』の字を描く。しかし、最初のノの部分は相手に描いてもらい、後はとぎれないようにして自分が続ける。
・力が相手に返っていく様子を、正確にイメージするだけで、非常に小さい動きでも相手を動かすことができる。(イメージした通り筋肉が順番に動く事を、実感する。「フェルデンクライス身体訓練法」)
・本当に動かしたいのは、相手との接点ではなく、相手の中心軸である事を忘れない。
・相手との接触部分はあまり動かさないようにして、自分の中心軸を真直ぐに保ったままで、相手の中心軸に入っていく。(両肩及び両股関節の4点を結んだ長方形の面を作り、その面を縦に2等分する線が中心軸になる。そして中心軸を保ちながら、肩で攻める。)
・呼吸のリズムと動作のリズム及び視線やイメージが一致するように動く。(すべての一致が力を生む。)
・振り子のリズムを身体で表現できるように練習する。(物体が落ちるリズムは、一定である。)
・相手との接触部分の緊張と弛緩の差を大きくする。(完全な弛緩が完全な緊張を生む。)
・高低の落差をつけるように、相手を導く。『山切りカット』(投げない。上げれば落ちる。)
・様々な陰陽虚実の転換に注意する。(作用/反作用・落/差・引き/攻め・接点や意識の虚/実など)
・『当てる合気』『付ける合気』『抜く合気』の3つの合気に分類することができる。
・極論すれば、3つの合気は外見上の速さが異なるだけで、動作・リズム・イメージは同一である。(『付ける合気』の稽古さえ正確にすれば、後の2つは自然に出来るようになる。)
・意識的に吸ったり・吐いたり・止めたり・呑んだりする事によって、相手の動きを操る。『呼吸を盗む』
by centeringkokyu
| 2005-12-27 00:39
| 合気観照塾