2016年 09月 25日
従来の医療のあり方にもの申す |
▼『脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線』訳者あとがき
本書は The Brain’s Way of Healing: Remarkable Discoveries and Recoveries from the Frontiers of Neuroplasticity (Viking, 2015)の全訳である。19か国で翻訳され、累計100万部以上を売った前作『脳は奇跡を起こす』(竹迫仁子訳、講談社インターナショナル、2008年、原書は2007年刊)以来待望されていた本書も諸方面から絶賛され、早々にニューヨーク・タイムズ・ベストセラー入りを果たした。
著者のノーマン・ドイジはカナダ・トロント在住の著名な精神科医で、テレビやラジオへの出演も多く、国内外で数々の講演を行なっている。ドイジは古典と哲学を専攻したのち、コロンビア大学で精神医学と精神分析学を学んだ。詩人でもあり、『批評の解剖』で知られる文芸評論家ノースロップ・フライに認められた経歴を持ち、彼の文芸的な才能は、ストーリー中心の本書でも遺憾なく発揮されている。
本書『脳はいかに治癒をもたらすか』は、前作と同様、「神経可塑性(Neuroplasticity)」という脳の持つ特質を巧みに引き出す治療に関して、ときに理論的な説明を織り交ぜながらさまざまな治癒のエピソードを紹介し、その実像を浮き彫りにしていくという手法をとっている。
理論的な説明に終始する短い第3章を除けば、たとえば第1章は視覚化を用いた慢性疼痛の治療などといったように、各章において、特定の形態の神経可塑性を利用した治療が豊富なエピソードを通じて紹介されている。そのため内容がきわめて具体的であり、専門知識を持たない読者にも非常に読みやすい本に仕上がっている。
外部からエネルギーを加えるなどの手段を通じて、脳のニューロンにおける配線の様態を変え、それによって治癒を促進するという神経可塑性を用いた治療は、一般の人々の目には非常に新しく映るはずだ。理論的な基盤はかなり以前から知られていたとはいえ、現実的な治療の手段として主流の医学界からも認められ、注目され始めたのはつい最近のことにすぎない。したがって本書で取り上げられている治療は、まさしく最先端の治療法だと言える。
ただ、最新の治療ではあっても、必ずしも高価な医療機器が必要なわけではなく、たとえば第2章で取り上げられているパーキンソン病の治療の例のように、「歩行」という単純な手段によってもその効力を発揮することができる。つまりその気になれば誰でも実践できるものもある。さらに言えば、本書で取り上げられている治療の事例は、通常の医療基準からするとかなり新奇なものが多い。たとえば視覚化による慢性疼痛の治療(第1章)、低強度レーザーによる脳損傷の治療(第4章)、PoNSと呼ばれる舌に刺激を与える小さな装置を用いた多発性硬化症、外傷性脳損傷などの治療(第7章)、音、音楽、音声を用いたさまざまな疾病の治療(第8章)などである。
こう書いていると、「この本は、科学的根拠のない代替療法を紹介する怪しげな代物なのではないのか?」と疑う向きもあるかもしれない。しかし本書は、神経可塑性に関する理論的な説明はもちろんのこと、おのおのの治療の基盤となる生理学的理論や、実験の結果に基づく科学的な根拠を逐一説明しており、煽情的な効果を狙ったいわゆるトンデモ科学の本とはまったく異なる。
とはいえ、このような新奇なテーマを扱うにあたっては、伝統的な科学や医学の見方にとらわれない開かれた心が必要になることも確かである。その点に関して言えば、著者のドイジはまさに適任と言えるだろう。彼は基本的には精神分析医であり、実践的な臨床活動を本業にしている。したがって科学者としての視点のみならず、医療の実践者としての視点も十全に備えている。第2章などに見られる、従来の医療のあり方にもの申す姿勢は、硬直した医療のあり方を変えたいと願う彼の心構えの如実な現われであると見なすこともできよう。
著者は東洋医学にも通じているようで、中国の気功への言及なども見られる。とりわけ英米の医学研究者のあいだでは、気功などの東洋医学はプラシーボ効果以上の有効性を持たず、「スネーク・オイル・サイエンス」(インチキ科学)以外の何ものでもないとして片付けられる場合が多いようだ。典型的には、アメリカの生物統計学者 R・バーカー・バウセルの書いたSnake Oil Science: The Truth About Complementary and Alternative Medicine (Oxford University Press, 2007)などに見られる。
しかしドイジは、その種の否定的な態度は取らない。それどころか彼は、次のように述べさえする。「心身医療を実践もしくは研究する臨床医や科学者は、プラシーボ効果の基盤をなす脳の神経回路を系統的に活性化する方法を考案できれば、劇的な医学的進歩を遂げられると主張する(58頁)」「プラシーボ効果による治癒は、投薬による治癒より<非現実的>というわけではない。それは、心が脳の構造を変えるという、神経可塑性の作用の一例なのである(58頁)」。訳者は気功に関して科学的な見解を述べられる立場にはないが、これらの引用によってわかるのは、著者が従来の医学の枠に拘泥することのない柔軟な思考様式を持っているということである。ではなぜ、神経可塑性治療には、そのような思考様式が必要になるのか?
#気づきや本舗の楽隠居です
この本は、例の如く図書館から借りたのですが、目次を見てびっくりして、購入しました。
なんと100ページくらいが、フェルデンクライス関連でした。
P258には、嘉納治五郎との出会いに関して、興味深い話も書かれていました。
これからじっくりと読もうと思います。
参照1:筋肉を無駄に緊張させている
参照2:脳の迷路の冒険
参照3:プラシーボ
参照4:陰主陽従
◎高次の触覚認識はすべてアクティブ・タッチである。様々な形状、材質のものをサルに与えて、サルにいじらせ、そのとき動くアクティブ・タッチ・ニューロンを探していくのである。そうすると、実に色々のニューロンがあることがわかった。三本指でつまむ動作をするときだけ発火するニューロン、ある指を曲げて他の指を伸ばしたときだけ発火するニューロン、何かをつかもうとして手を伸ばすときだけ発火するニューロンなどなど、複雑な能動的動作で初めて発火するニューロンが出てきた。こういうニューロンは、自分が動かない限りぜんぜん発火しない。だから、従来の研究方法のように、サルの体表をあちこちいろんなふうに刺激しても、まったく反応がないということになる。
◎実際に手の指を動かした時と、実際には動かさずに、動かしている時と同じように、筋肉を動かすところを正確にイメージするだけでも、同じように脳の中の運動野が活性化する。頭の中で言葉を発すると、言語野が活性化するのと同じような現象である。アメリカの研究では、何かを見ていると想像させると、視覚野が活性化したという報告がある。
#楽隠居再び?
これまでに何度も申し上げているように、アクティブ・タッチが、「合気」特に「触れ合気」を掛けるためのヒントになったのです。そして、フェルデンクライス・メソッドが、私の合気修行【合気道修行ではありません】の原点です。
因みに、「センタリング・タッチ」は、「触れ合気」の応用だと考えています。
◎武道歌撰集一之巻より制剛流
われとわが 心に伝ふ 鍛錬に 妙も不思議も あるとしるべし
動きなき 心を思ひ 悟らずば 皆いたづらの 稽古なるべし
参照5:見えない動き
「神力徹眼心」や「息のしかた」を読んだとき、私は非常な感動を覚えました。「見えない動き」の必要条件が書かれていると感じたからです。
私自身は、武術的な強さや治療法としての技術を求めている訳ではありませんが、「治療にも使える合気」を目指している方達もおられますので、何らかの参考にしていただけるような身体創りのお手伝いをさせていただきたいと思っています。
ダンスをするような大きな動きでは、とうてい治療には使えませんから・・・
参照6:センタリング アドバイス
どうやら10年前に脳梗塞で倒れられ、半身不随だったそうです。腰に付けた万歩計が、今日すでに7千歩ちかく歩いてこられたのを表わしていました。ご夫婦そろっての努力家でいらっしゃるようです。K野先生の業界の会長さんだそうです。昔は怖い存在で、色々とご指導いただいた恩師のような方だそうです。
今では、外見上、半身不随だったとは気づけない程お元気で、九州での同窓会に出席されたり、ご夫婦での旅行にも時々出かけられるようです。いわゆる九州男児だったのですね。
ご主人もK野先生の呼吸の誘導に素直に合わせられます。(合気ですね。)こちらも1〜2度お腹に空気を入れたり吐いたりしているうちに変化が表れます。やはり普段からご自分で呼吸法をなさっていると、戻るのも早いです。
by centeringkokyu
| 2016-09-25 00:34
| フェルデンクライス身体訓練法