2009年 01月 30日
自分の身体を自分で変え 持てる能力を引き出す |
月刊「秘伝」2002年10月号からご紹介します。
〝動きの質"の再検討による「胴体力」メソッド開眼!!
しかし、24歳の時、身体が動かなくなる。
重度の腰痛と疲労感、髪はバサバサ、顔色は土気色で生気を失い、視力はなくなり、爪からは出血が続くなど、周囲の人からは、「原因不明の病で死ぬのではないか?」とまでいわれる状態に陥る。
その原因が、体力に任せての剛法の数稽古であったことから、手足や腰といった同一の筋肉の酷使から疲労限界を起こし、また、同じ動作の繰り返しから、内臓の働きを妨げたことにあると考えた。ヨガを学びながらも「身体を強くすること」のみに終始し、一番肝腎な「どうしたら身体を無理なく効率的に動かせるか」を忘れたことにあると、反省した伊藤師は、道場を後輩に譲り、4年間にわたり身体に関するあらゆる訓練法を調べ、それを自らの身体で試し、胴体カメソッドの基礎を構築する。
昭和50年、その経験を活かし「更なる技の質の向上」を目指し、東京で代沢飛龍道院を設立する。「年齢、性別を問わずに、体力、技術は向上できる」という考えから、自らの故障の原因を鑑みて、稽古前の胴体トレーニングに30~40分といった時間を掛け、各人の能力に合わせた身体作りをする一方で、2ケ月に一度、10日ほどの日程で合宿を行い、技の稽古以外にも基本的なトレーニングや身体調整法、分子栄養学に基づいた食事法などを行った。
その間も伊藤師は、武道では、大東流の岡本正剛師範、正木流の名和弓雄宗家、気の研究会の藤平光一師範などを訪れ、身体運用ではフェルデンクライスや、修正体操の原崎勇次師に師事するなど、研究に余念がなかったという。このほか、伊藤師が研究実践したものには、なぎなた、居合、肥田式強健術、アレクサンダー・テクニーク、歌唱法などがあったことが、わずかに伝えられている。
生前、体操が上達せず、苦心している旨を伝えると「胴体力は、アクロバティックなポーズができるようになることを目指すのではありません。身体の使い方が良くなれば、自分の身体に自信が持てますから、それを使って自分が望むことができるようになります。そうすれば、自分をいつもニュートラルな位置に置くことができますから、ヒューマンリレーションや、今、流行のクライシスコントロール(危機管理)にも、的確な判断ができるようになりますよ」と、アドバイスをいだいた。
伊藤師の残した胴体力のトレーニングは、単なる健康体操ではなく、自分の身体を自分で変え、持てる能力を引き出し、自らの夢を実現させるためのメソッドといえるだろう。
#楽隠居です
伊藤氏は2002年5月にお亡くなりになりました。この特集の第3部、「我が師・我が朋友 伊藤昇の面影」には、坂東玉三郎(歌舞伎俳優/舞踊家)・菊池秀行(作家)・森道基(少林寺拳法神戸兵庫道院長)・中村有志(俳優/パントイマー)・日野晃(日野武道研究所)・名和弓雄(正木流小武術宗家/時代考証家)・小用茂夫(身法研究会主宰/元大東流合気柔術六方会同期生)などの方達が追悼文を書いておられます。
詳しくは配付資料007をお読み下さい。配付資料の保管先が変更されました。会員諸氏にはお伝えしましたが、こちらの手違いで変更先が通知されなかった場合は、楽隠居までお問い合わせください。
参照1:反射条件・円・呼吸
参照2:生活の中の合気道
参照3:脳の迷路の冒険
参照4:心身の不必要な緊張をやめるために
参照5:歌にも役立つ?呼吸法
参照6:ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う
参照7:柳生新陰流を学ぶ
参照8:演奏のコツ
参照9:ハット&サスペンダー
参照10:どうしたらできるのか?
by centeringkokyu
| 2009-01-30 00:35
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