2009年 01月 29日
股関節のとらえ / 骨盤の細分化 |
月刊「秘伝」2000年6月号からご紹介します。
◎胴体理論で塩田剛三を解明する!
▼股関節のとらえ
伊藤師は言う。
「塩田先生の動きを見ていると、股関節で地面をしっかりとらえているのがわかります。この『股関節のとらえ』こそ秘密を解く鍵の一つです」
ここで「股関節のとらえ」について、伊藤師の著書から引用してみる。
胴体の動きの土台となるのが、「股関節で地面をとらえる」(股関節のとらえ)ことである。もらろん、これは私の感覚に基づいた造語だが、これは動く前の、「究極のニュートラル・ポジション」である。簡単に言ってしまえば、「股関節と脚の骨(大腿骨など)が正しい角度にある状態」となるのだが、"正しい角度"は万人にとって同じではない。(中略)立ったとき、座ったときにかかわらず、股関節でとらえることができれば、全身は解放され自由な動きが可能に楽になる。意識的に股関節でとらえられるかどうかは、レベルの高い動きかどうかを見分けるキーポイントであり、股関節でとらえた状態で胴体のトレーニングをすれば上達も速い」(伊藤昇者『スーパーボディを読む』より)
「つまり、いかに上手に地球上に立っているか、ですよ」
伊藤師によれば、「股関節のとらえ」が非常に発達していたからこそ、塩田師はあれほどのスピーディーな動きが可能であったのである。
「世界のどんなに優れたダンサーよりも塩田先生の『股関節のとらえ』はしっかりしています。だから動きにムダがないのです。
よく見ると、塩田先生は、地面に股関節の二点で立っているんです。それが左右の切り替えの速さを生んでいる。余分な力が一切いらないから、立つこと自体が非常に楽だったはずです。
実際、演武中の塩田先生はすごく楽しそうでしょう? かかってくる相手を実に嬉しそうにさばいている。体が軽く、立っているのが非常に楽で、動きたくてしょうがなかったと思いますよ」
塩田剛三の激しくも明るい、爽快な演武は「股関節のとらえ」が生み出したものなのである。
▼骨盤の細分化
「骨盤の細分化」が優れていたことも伊藤師は指摘する。
「多くの人間は、脇腹から腰にかけての意識がボンヤリしていて、ブロックのようなひとかたまり、ぐらいにしか認識できない。肋骨と骨盤を区別して引き離すことができないんです。こうした"鈍い体"では精密な動作を望むべくもありません。
しかし、三つの動き(「丸める・反らす」「伸ばす・縮める」「捻る」)で区別することに成功すれば、さらに進んで骨盤(内)の細分化が可能になります。
骨盤と肋骨が一体化したままだと肋骨を上げると骨盤もせり上がってしまう。しかし骨盤は本来は下に沈むべきものなんです。もし内部の筋肉が目覚めて、骨盤が沈むようになれば、たとえつま先で立っても、重心は下の方に落ち着くのです。塩田先生の場合、我々の想像をはるかに超える、骨盤の域に達していたわけです。
塩田先生が人差し指で相手の首を突く技を行う時、先生の骨盤は『伸ばす動き』で骨盤が沈み、垂心が下がり、さらに骨盤の細分化で脚部に大きな力が伝わっているので、体はさらに安定しています。それで、わずかな動作で大きな破壊力が生まれるのです。
骨盤の細分化とは、骨盤内を明確に区別して使えること、と言えます。腸骨部分を脚を動かす時に自在に動かせることで、相手にはただ立っているようにしか見えない時でも、想像を絶する力が脚部に伝わっているのです」
◎瞬間的なひらめきを感得し発展させることができたひと
「塩田先生は、ビデオを見ると若いころより六十代、七十代のころのほうが動きがいいですね。より柔らかくなっています」
そう伊藤師は語る(ちなみに伊藤師の持論は"人間の動きのピークは六十歳を超えてから"である)。
「塩田先生は、自分の肉体に関してとても明確な意識をもっていたはずですよ。肩や骨盤など、普通の人間では獲得できないような部位にまで、微細な感覚をもっていたと思います。
相手の動きに対しては、まるで相手の背後に方眼紙を置いたかのように、ほんのわずかに動いただけでも敏感に正確に察知したはずです。
とにかく、われわれとは次元の違う人ですよ」
伊藤師は胴体の三つの動作のなかでも「伸ばす・縮める」が特に優れていたと分析するが、一方「捻る」動きがそれほど見られない、とも。
「ですが、捻る動きが要求される場面がくれば、やはり優れた動きをされたであろうと思います。
おそらく、塩田先生は稽古の途上で一瞬脳裏をよぎる"これだ!"という感覚を逃さず把握し、発展させることができた人だったのでしょうね」
伊藤師の慧眼は、天才にしか到達しえぬ霊妙な世界に、われわれ凡人を導き入れてくれるようだった。そして伊藤師によって塩田師の肉体と動きの秘密が明らかにされるにしたがい、"天才・塩田剛三"の偉大さをあらためて実感させられた。
#楽隠居です
私も"人間の動きのピークは六十歳を超えてから"を目標にしたいと思っていますが、これがなかなか難しい。五十才を越えると確実に身体の締まりが悪くなりました。でも、私の場合は、センタリング呼吸法を教えることで、そのことに早く気づくことができ、骨盤と股関節に対する意識は、このところ確実に変化しつつあります。
合気や調整の技術も省エネ化出来つつあるのではないかと思っています。あと十年ぐらいは、出来るだけ衰えないようにしたいのですが・・・
詳しくは、配付資料151をお読みください。
参照1:合気道の理合
参照2:合気道修行
参照3:根本は自分の中心力
参照4:骨盤時計に始まり骨盤時計に終わる
by centeringkokyu
| 2009-01-29 00:01
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